性病・性感染症について|さぎぬま泌尿器科・美容クリニック|川崎市宮前区の泌尿器科

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性病・性感染症について

性病・性感染症について|さぎぬま泌尿器科・美容クリニック|川崎市宮前区の泌尿器科

性病・性感染症について
Sexually transmitted infection(STI)
Sexually transmitted diseases (STDs)

即日検査可能
疾患
(原因微生物)
潜伏期
(感染してから
発症するまでの期間)
感染経路
(病原体が体の中に
侵入する経路)
症状
男性 女性
細菌 淋菌感染症 2~7日 性的接触を介する
粘膜との直接接触
強い排尿時痛
膿尿
膿性分泌物
症状を感じないことが多い
おりものの増加
不正出血
性器クラミジア感染症 1~3週間 軽い排尿時痛
軽い尿道掻痒感
漿液性分泌物
梅毒 3週間 感染部位の赤いしこりやただれ、リンパ節腫脹(第一期)
発熱、全身倦怠感、様々なタイプの皮膚病変(第二期)
結節性梅毒疹、ゴム種など(第三期)
心臓、血管、脳が冒される心血管病変、中枢神経病変など(第四期)
ウイルス HIV感染症/AIDS 数週間~数年 血液や体液との直接接触 感染成立の2~3週間後に発熱、頭痛などのかぜ様症状が数日~10日程度続き、
その後数年~10年ほどの無症候期に入る。
放置すると免疫不全が進行し種々の日和見感染症や悪性リンパ腫などを発症する
性器ヘルペス 2~10日 性的接触を介する皮膚・
粘膜病変との直接接触
性器の搔痒感、不快感、強い疼痛を伴う
水疱、びらん、潰瘍
免疫低下時に再び活性化し再発(回帰感染)を繰り返す
尖圭コンジローマ 3週間~8ヶ月 性器、陰部・肛門周囲などに淡紅色~褐色の乳頭状、
鶏冠状、あるいはカリフラワー状のイボ
ウイルス
性肝炎
B型肝炎 約3ヶ月 血液や体液との直接接触 発熱や全身倦怠のあと黄疸。無症候の場合もある
C型肝炎 2週間~6ヶ月 全身倦怠感、食欲不振、黄疸などが見られるが症状は軽い
真菌 性器カンジダ症 不定 性的接触にて伝播するが、
必ずしも発症しない
免疫力低下に伴う常在菌に
よる自己感染が多い
亀頭包皮炎
亀頭のかゆみ、ただれ、
赤み、白いカス、水疱
膣炎
かゆみ、灼熱感、痛み
ヨーグルト状のおりもの
原虫 膣トリコモナス症 不定 尿道や性器からの
分泌物との接触
その他、下着・タオルなどを
介しての感染
無症状が多い
軽い排尿時痛
分泌物
膣炎
悪臭のある泡沫状おりもの
刺激感や強いかゆみ

はじめに

性病・性感染症について

人類の性の営みとともに存在し続ける性感染症。性行為を介して伝播する病原体は30種類以上ありますが、その中でも最大の発生率に関連しているのが、トリコモナス・クラミジア・淋菌・梅毒・B型肝炎・ヘルペス・HIV・ヒトパピローマウイルス(HPV)の8種です。そのうちB型肝炎とHPVの2種は有効なワクチンが存在し、世界中の国々で定期予防接種プログラムに組み込まれていますが、トリコモナス、クラミジア、淋菌、ヘルペス、HIVの6種はワクチン開発の研究中であり、有望なワクチンがまだ開発されていないのが現状です。また性行為感染症(STI/STD)予防のためのその他の医学的介入としては、成人男性の包皮の環状切除(包茎手術)があり、性交渉でのHIV感染するリスクを約60%低下させ、ヘルペスやHPVなどの性病に対して予防効果があることが分かっています。
世界保健機関(World Health Organization:WHO)によると、世界中で毎年約3億7000万人(毎日100万人以上)が性病に感染しています。そして世界人口の25人に1人がトリコモナス、クラミジア、淋菌(淋病)、梅毒のどれかに感染しているという報告があり、性行為感染症(性病)の広がりは日本だけでなく世界の問題となっています。日本においては感染症法の規定でクラミジア・ヘルペス・尖圭コンジローマ・淋菌は5類定点把握疾患として、梅毒は5類全数把握疾患として、保健所を経由し都道府県や国に動向調査が報告されています。
性行為感染症は、主に膣性交、口腔性交(オーラルセックス)、肛門性交(アナルセックス)などの性行為や性的接触により、口や性器などの粘膜や皮膚から感染し広がります。そして感染するとさまざまな疾患や生殖機能、胎児への影響など多くの深刻な問題を与えてしまいます。
誰もがたった一度の性行為でも感染する可能性がある病気、それが性感染症です。性感染症は、治療が遅れれば遅れるほど、治りにくくなります。だからこそ、気になった時点で早めに受診し、しっかりと治すことが大切です。

現在の性行為「セックス」は多様化しており広い意味を含みます。

  • 膣(ちつ)性交
  • 口腔(こうくう)性交(オーラルセックス)・・・フェラチオ・クンニリングス
  • 肛門(こうもん)性交(アナルセックス)

治療において大切なこと

治療において大切なこと

性病検査について実際の診察の流れとして、まず受付を行いその後診察室へご案内します。さぎぬま泌尿器科・美容クリニックは、より正確な診断と治療に繋げるため視診や検査、処置を行う前段階として病気の手がかりを得るために、まずはお話をお伺いすることに力を入れています。その際、深く踏み込んだ内容のお話を伺うかも知れません。話しづらいこともあるかと思いますが、適切な検査と治療のためにあなたの性に関する健康状態を伺ったうえで、性感染症(性病)のリスクがないかどうかを確かめる必要があります。
近年行われた調査によると男性の7〜8%、女性の4〜7%がゲイやレズビアン、両性愛者(バイセクシャル)であると報告されています。多様性を認め合う現代だからこそ、川崎市宮前区のさぎぬま泌尿器科・美容クリニックは一人ひとりの性のあり方が尊重されるクリニックとして、先入観や偏見、差別を持つことなくプロフェッショナルな態度で中立的な立場に立って丁寧な説明を心がけています。
あなたが打ち明けようとする話や心配事、交際関係、性的嗜好(Sexual Preference)、性同一性(Gender Identity)や性的機能(Sex Function)、性パートナー(Sexual Partner)、性風俗に関わる方(セックス・ワーカー:Sex Worker)、セクシャル・ヒストリー(Sexual History)など、お話いただいた会話内容や個人情報は決して外に漏らさないことを約束し、どんなことでもここだけの秘密として守ります。もし診察中に分からないことや不安なこと、気になることがありましたら遠慮なくお尋ねください。

参照:
1. Hebernick D, Reece M, Schick V et al. Sexual activity in the United States results from a national probability sample of men and women ages 14-94. J Sex Medicine 2010; 7(Suppl 5):255-265
2. Gates GJ. Same sex couples and the gay, lesbian, and bisexual population: new estimates from the American Community Survey. October 2006. Available at http://www.law.ucla.edu/williamsinstitute/publications/SameSexCouplesandGLBpopACS.pdf. Accessed December 19,2010.

性病・性感染症の種類

淋菌感染症:Gonorrhea Infection

  • 病原体:淋(りん)菌
  • 感染経路:性行為(眼・口・のど・尿・膣・肛門)
  • 潜伏期間(感染してから症状が出るまで):約2〜9日
  • 検査方法:尿検査、感染部位(膿、のど、膣分泌液、肛門)ぬぐい検査
  • 治療方法:抗菌薬(点滴・内服)の投与
性感染症報告数

特徴:Features

淋菌感染症とは、細菌の一種である淋菌(Neisseria gonorrhoeae)に感染することによる疾患です。
淋菌は、主に性交や性交類似行為により、感染部位の粘膜との接触や分泌物との接触により、ヒトからヒトに感染します。淋菌はヒトの粘膜から離れると感染性を失うため、性交や性交類似行為以外で感染することはごく稀ですが、手指やタオルを介しての感染が疑われる報告も一部あります。
一度の性交渉での感染率は約20〜50%で、クラミジアの同時感染も20〜30%と言われています。クラミジアに次いで2番目に多い性感染症であり、傾向として20代の男性に多いです。
喉や直腸、眼にも感染しますが、症状はほとんど出ません。喉の場合は、咽頭炎のような、のどの腫れ、痛み、発熱などがあります。直腸の場合は、肛門のかゆみ、不快感、下痢、血便などがあります。眼の場合は、まぶたの腫れ、白目がゼリー状に膨れる、膿が出る(淋菌性結膜炎)などがあります。また、性器に淋菌が感染している人の10~30%で、喉にも淋菌が存在しているとの報告があります。
治療せずに放置すると、菌が血液から全身に広がり、心膜炎、心内膜炎、髄膜炎および肝周囲炎を起こします。典型例の関節や皮膚の炎症では、急激に発症し、発熱、複数の関節で痛みや動きが制限され、赤く腫れあがります。関節が発熱し押すと痛む等の症状が出ます。

淋菌感染症グラフ

症状:男性の場合 Symptoms:For men

一般的な症状は急性尿道炎により、尿道のかゆみや熱っぽさから始まり、黄色の膿みや粘液性の分泌物が出現し、排尿時にうずくような痛みがあります。排尿時の痛みがひどくなり、ペニス全体が腫れ上がるほどの激しい症状が出ることもあります。後遺症として尿道狭窄により排尿困難になることがあります。
治療せずに症状が進むと、尿道狭窄(尿道が狭くなる)、前立腺炎、精巣上体炎となります。この場合は前立腺や陰嚢の腫れ、うずくような痛み、全身の発熱などの症状があります。治療後に不妊症や無精子症を生じる場合があります。自覚症状のない場合もありますが、感染していないわけではなく、感染源になります。

症状:女性の場合 Symptoms:For women

子宮頸管炎や尿道炎として発症しますが、自覚症状のない場合が多く、その場合でも感染源になります。症状がある場合は、緑黄色の濃いおりものや、おりものの増加、生理以外の出血(不正出血)、下腹部の痛み、性交時の痛み、尿道から膿(うみ)がなど出ます。治療せずに症状が進むと、子宮内膜炎、子宮付属器炎(卵管炎、卵巣炎)、骨盤内炎症性疾患(PID)、肝周囲炎を起こすことがあり、この場合は、発熱や下腹痛が自覚症状となります。後遺症として、子宮外妊娠や不妊症となることがあります。

症状:新生児の場合 Symptoms:For newborns

母親が感染していると、産道感染(出産時に赤ちゃんが産道を通る時の感染)し、淋菌性結膜炎(まぶたや結膜が非常に腫れ上がり、大量の膿みが滲み出てくる)による失明や関節炎を起こしたり、命に関わる状態になることもあります。

予防:Prevention

予防接種はありません。また、感染して治っても免疫ができないため、何度でも再感染します。
予防には性行為だけでなく、性交類似行為も含む性的接触時には、コンドームを必ず使用することです。
不特定の相手との性的接触を繰り返し行う場合や、複数の性的なパートナーがいる場合には注意が必要です。

治療方針:Treatment Policy

薬剤耐性菌の増加が問題となっており、現在淋菌感染症に対して保険適用を有している抗菌薬は以下の2剤のみです。

  • セフェム系(ロセフィン)
  • アミノグリコシド系(トロビシン)など

治療効果の判定は抗菌薬開始から2〜3週間を経過した時点で陰性確認を行います。

治療例:Treatment Example

ロセフィン注 1回1g 点滴静注 単回
トロビシン注 1回2g 筋肉注射 単回

治療薬

クラミジア感染症:Chlamydial Infection

  • 病原体:クラミジア・トラコマチス
  • 感染経路:性行為(眼・口・のど・尿・膣・肛門)
  • 潜伏期間(感染してから症状が出るまで):約1〜3週間
  • 検査方法:採血(IgA/IgG)、尿検査、感染部位(膿、のど、膣分泌液、肛門)ぬぐい検査
  • 治療方法:抗菌薬(内服)の投与
クラミジア感染症報告数

潜伏期間は約1〜3週間

特徴:Features

細菌の一種でクラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)病原体に感染することによる性感染症です。日本で最も多い性感染症ですが、男女とも半数以上は無症状と言われ、感染しても気付かないことが多いです。主に性交や性交類似行為により、感染部位の粘膜との接触や分泌物との接触により感染します。1回の性行為における感染率は約30〜50%です。
性交類似行為(口腔性交)により咽頭に感染した場合は、咽頭炎により頚部リンパ節腫脹(首のリンパ節が腫れる)、のどの痛み、発熱などの症状が出ることがあります。直腸に感染した場合、肛門周囲の痛みや出血、分泌物の出現し、眼に感染した場合は充血、まぶたの腫れといった症状が出ることもあります。パートナーの片方が治ってももう一人が感染しているとお互いに移し合いを続けてしまいます。
淋菌との重複感染(20〜30%)も多く、淋菌性尿道炎(gonococcal urethritis; GU)の治療にもかかわらず症状が軽減しない場合は、クラミジアの感染が疑われます。

性器クラミジア感染症

症状:男性の場合 Symptoms:For men

男性器では尿道炎として尿道に症状が出ることが最も多いです。また若年層(10〜30代)の精巣上体炎の原因ともされています。無症状のことが多いですが、軽い発熱、排尿痛、尿道不快感、腫れ、かゆみを感じるなどの症状が出ることがあります。尿道分泌物(サラサラした透明〜乳白色の膿)による下着の汚れで、気付くこともあります。男性では治療しないと前立腺炎や精巣上体炎、不妊症の原因となることがあります。

症状:女性の場合 Symptoms:For women

自覚症状を感じないことが多いです。そのため潜伏期間を特定するのは難しく、無自覚のうちに男性パートナーや出産児へ感染させることもあります。子宮の入り口(子宮頸管)に炎症を起こすため、おりものが黄色くなり増える、生理痛のような痛み、下腹部の痛み、性行為時の痛み、生理以外の出血(不正出血)などの症状が出ることがあります。
子宮頸部に感染した後は子宮頸管炎を発症し、無治療例では子宮内膜炎、卵管炎と上行感染を引き起こし、さらに無治療では、骨盤内付属器炎(PID:Pelvic Inflammatory Diseases)、骨盤内から上腹部へ拡散すると、肝周囲で増殖し右上腹部痛を伴う肝周囲炎を発症します。子宮外妊娠、不妊症、母子感染の原因となります。妊婦健診において正常妊婦の3〜5%にクラミジア保有者が認められており、女性の不妊症の1/3はクラミジアが原因と言われています。

症状:新生児の場合 Symptoms:For newborns

妊娠中に感染すると流産・早産の原因になることもあります。
また、母親から出産時(分娩時の産道感染)に感染し、結膜炎や肺炎を発症することがあります。結膜炎になる場合は生後5~12日に、目ヤニや結膜充血などの症状が出ます。肺炎になる場合は1~2ヶ月の潜伏期を経て、通常は熱が出ることはなく、呼吸が頻繁になる、呼吸時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がする、痰や喀血を伴う湿った咳がでるなどの呼吸器症状がでます。低出生体重児などでは重症化する場合もあります。

予防:Prevention

予防接種はありません。また、感染して治っても、免疫を獲得しないので再度感染します。
予防には、性行為だけでなく性交類似行為も含む性的接触時にはコンドームを必ず使用することです。
無症状で感染している場合があるので、不特定の相手との性的接触を繰り返し行う場合や、複数の性的なパートナーがいる場合には注意が必要です。

治療方針:Treatment Policy

クラミジアに効果のある抗菌薬(抗生物質)を1日〜1週間投与します。

  • マクロライド系(ジスロマック、クラリス)
  • テトラサイクリン系(ミノマイシン)
  • ニューキノロン系(クラビット)など

重症例では入院のうえ、点滴静注療法を行うことがあります。
治療効果の判定は抗菌薬開始から2〜3週間を経過した時点で陰性確認を行います。

治療例:Treatment Example

内服

ジスロマック錠(250mg) 1回4錠 1日1回 単回
クラリス錠(200mg) 1回1錠 1日2回 7日間
ミノマイシンカプセル(100mg) 1回1カプセル 1日2回 7日間

内服薬
点滴

ミノマイシン注 1回100mg 1日2回 点滴静注 3〜5日間
ジスロマック注 1回500mg 1日1回 点滴静注 1〜2日間+ジスロマック錠(250mg)1回1錠 1日1回 5〜6日間
クラビット注 1回500mg 1日1回 点滴静注 7日間

内服薬

梅毒

  • 病原体:梅毒トレポネーマ
  • 感染経路:性行為(眼・口・のど・尿・膣・肛門)、キス
  • 潜伏期間(感染してから症状が出るまで):約1ヶ月(個人差あり)
  • 検査方法:採血(感染後1ヶ月以上経過はTP/RPR、感染後2ヶ月以上経過後はTP)
  • 治療方法:抗菌薬の投与
梅毒報告数

特徴

20代の男性に多く、皮膚や粘膜の小さな傷から感染する。進行性の病気であり、感染後も一旦症状が消えるため治ったと間違われることが多い。感染力は強く、1回の性行為でうつる可能性は15〜30%の確率。治療の遅れや放置すると脳や心臓に重大な合併症を起こす。妊娠中は赤ちゃんにも感染することがある。なお、梅毒はHIVの感染リスクを高める可能性がある。

症状

梅毒は、感染したあと、経過した期間によって、症状の出る場所や内容が異なる。

第一期

感染後約1か月で、感染した場所(性器、肛(こう)門、口など)に、できもの、しこり、ただれなどができる。治療しなくても、数週間で症状は消える。

第二期

感染後3か月程度経つと、手のひらや足の裏など全身に小豆大のイボ、発疹、湿疹などができる。治療しなくても、数週間から数か月で症状は消える。

  • 第三期、第四期もありますが、現在の日本国内において進行した症例はほとんど報告がありません
当院では治療として注射薬のステルイズ®の取り扱いもございます。
注射薬「ステルイズ」

トリコモナス症:Trichomoniasis

  • 病原体:トリコモナス原虫
  • 感染経路:性行為(性液・尿・膣)、浴槽・トイレ・タオル等の共用
  • 潜伏期間(感染してから症状が出るまで):約1〜3週間(個人差あり)
  • 検査方法:尿検査、膣分泌物(綿棒)ぬぐい採取
  • 治療方法:抗原虫剤(フラジール:内服薬)の投与
膣トリコモナス症

特徴:Features

トリコモナス症は、腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)という原虫に寄生されることで引き起こされる、腟や尿道、性器の性感染症です。WHOによると世界中で年間1億7000万件の感染者が発生していると推定され、それゆえに世界で最も流行し最も有名な性感染症といわれています。世界で一番感染者数の多い性感染症であり1位はトリコモナス症、2位はクラミジア、3位が淋菌、4位が梅毒、と続きます。

日本では男性の1〜2%、女性の5〜10%が感染しているといわれており、年齢分布では男性では40〜49歳、女性では21〜22歳、48〜51歳が感染者のピークだと報告されています。また女性の方が男性よりも症状が強く現れますが、全感染者の70〜85%がほとんど無症状か無症候性(病気を抱えているが症状がない状態)です。

主な感染経路は性行為であり、長期にわたり泌尿生殖器に持続感染することがあるため、意図せずにセックスパートナー(Sex partner)を感染させます。また性行為(Sexual act)の経験が無い女性や幼児でも感染者の報告があり、身に付ける下着やタオル、共用の便座や浴槽などモノを通じて介した間接的な接触でもうつることが知られており有病率の高さに繋がっています。

正確な潜伏期間は10日前後や4〜28日程度など研究報告もあり正確な期間は不明です。
膣トリコモナス(T. vaginalis)は、膣ばかりではなく子宮頸管、下部尿路、パートナーの尿路、前立腺などにも侵入することで尿道炎、腟炎、膀胱炎、精巣上体炎、前立腺炎を引き起こすこともあります。

診断は、直接鏡検、試験紙検査、腟分泌物の核酸増幅検査、尿や尿道分泌物培養検査で判断し、メトロニダゾールやチニダゾール等の治療薬を使用します。
トリコモナス症患者の多くは、 淋菌感染症やその他の性感染症の同時感染もよくみられること、続発症としてヒト免疫不全ウイルス(HIV)や卵管炎などの骨盤内感染(PID)の関係性も指摘されています。感染者は症状が軽減しても感染症が治るまで性交を控えないとパートナーを感染させる可能性があります。

症状:男性の場合 Symptoms:For men

感染した男性の70%以上の割合で症状がない(無症候性)ことが多く、症状があっても軽い排尿時の痛み、頻尿、かゆみ、不快感、分泌物など一過性の尿道炎症状がみられる程度です。尿道(膀胱から尿が排泄されるまでに通過する部分)内で増殖し炎症を起こすため、尿道の刺激感、早朝にかけて排尿困難や頻尿の出現、泡状もしくは膿性の分泌物を生じることがあります。尿道への感染だけの場合は性行為後にすぐに排尿することで洗い流されることもあります。前立腺や精嚢に寄生することで前立腺炎、亀頭包皮炎、精巣上体炎などの合併症を生じるとされています。男性の大半の人が無症状、軽い症状だからこそセックスパートナーに感染させ拡大する可能性があります。

症状:女性の場合 Symptoms:For women

女性の場合、半数以上は感染しても症状がなく経過し、最終的に症状を発症していきます。症状が出ない保菌状態が数ヶ月続くこともあり、いつ誰から感染したか感染経路が判明しないケースも多いです。症状は男性よりも強く、白色から黄緑色の泡状の生臭い悪臭の強い帯下(強い悪臭がするおりもの)の出現、陰部(外陰部、膣)の刺激感、陰部過敏による痛み、強いかゆみ、性交痛、排尿時痛、排尿困難などです。症状がない場合でも発症をせず感染をしている状態のため、治療をしないと他の人を感染させます。重症の場合、陰部や周辺の皮膚が炎症を起こし、腟の入口周辺の組織(陰唇)が腫れて浮腫みます。また感染している70%の人に膣内に発赤を認め、約90%の人に腟壁および子宮頸部の表面に「苺状」の赤い斑点が現れることがあります。トリコモナス原虫は膣だけでなく子宮の入り口(子宮頸管)、膀胱、尿道にも寄生し尿道炎やときに膀胱炎も起こします。

症状:新生児の場合 Symptoms:For newborns

妊娠中に感染すると、早産や未熟児が増加するとの報告があります。また妊婦から新生児への垂直感染も認められ、新生児結膜炎や乳児肺炎を引き起こすことがあります。

予防:Prevention

トリコモナスは自然治癒させることができません。また治療を行い完治しても免疫はできないため、何度も繰り返し感染します。

治療方針:Treatment Policy

分泌物の顕微鏡検査や培養検査や遺伝子学的検査を行います。抗トリコモナス剤の内服薬や膣(ちつ)錠で治療します。現在は5-ニトロイミダゾール系のメトロニダゾールが一般的です。基本は経口剤を用いますが、膣錠の単独療法や難治例や再発例では経口・膣錠による併用療法を選択することもあります。重要なのは必ず医療機関で診断を受け、パートナーも同時期、同期間に一緒に完全に治すことです。また内服投与により胎盤関門を通過して胎児に移行することが知られているため、妊娠12週未満の投与は行いません。

治療例:Treatment Example

メトロニダゾールの経口投与で90〜95%の消失がみられます。同時期に患者とパートナーの両者を治療すればその予後は良好です。注意としてメトロニダゾールは、投与中の飲酒により、アンタビュース様症状(周期的に反復する発作的な腹部の痛み、吐き気、皮膚の紅潮)を引き起こすことがあります。そのため投与中および投与後3日間の飲酒は避けることが必要です。

経口薬

メトロニダゾール(フラジール錠250mg) 1回1錠 1日2回 10日間
チニダゾール(ハイシジン錠200mg) 1回1錠 1日2回 7日間
チニダゾール(ハイシジン錠500mg) 1回4錠 単回投与

チニダゾール・フラジール
膣錠

メトロニダゾール(フラジール膣錠250mg) 1日1錠 10〜14日間
チニダゾール(ハイシジン膣錠200mg) 1日1錠 7日間

チニダゾール・フラジール

性器ヘルペスウイルス感染症

  • 病原体:単純ヘルペスウイルス1型又は2型
  • 感染経路:性行為(眼・口・のど・尿・膣・肛門)、タオルや食器など間接的接触
  • 潜伏期間(感染してから症状が出るまで):約3〜7日(個人差あり)
  • 検査方法:採血、水ぶくれを破って、内溶液に含まれる感染細胞の検査
  • 治療方法:抗ウイルス剤(内服、軟膏)、抗炎症剤、鎮痛剤の投与
性器ヘルペス報告数

特徴

男性は30代、女性は20代が多い。一度感染するとウイルスが一生涯体の中に住み続けて完全に除去することができず、体力や免疫が落ちた時に再発を繰り返す。性器ヘルペス感染症は、主として2型。1型の口唇(こうしん)ヘルペスウイルスも、口から口へ、口から性器にも感染する。

症状:男性・女性の場合

主に口、性器、お尻周辺の水ぶくれ・尿道からの分泌物・歩行困難になる場合もある

性器カンジダ症

  • 病原体:カンジダ・カンジダ属
  • 感染経路:性行為(性器、口腔内、膣、尿、皮膚)、浴場など共有部分でも注意が必要
  • 潜伏期間(感染してから症状が出るまで):何年にも及ぶことがあります。
  • 検査方法:尿検査、皮膚擦過検査、膣分泌物検査
  • 治療方法:抗真菌薬(内服、軟膏、膣錠)

特徴

カンジダは真菌(カビ)の一種。セックスで感染するが、健康な人でも体内に持っている常在菌である。そのため免疫や抵抗力が落ちた時などに発症する。

症状:男性の場合

亀頭のかゆみ・赤み・水ぶくれ

症状:女性の場合

陰部のかゆみ・おりものの増加(ヨーグルト状)・膣の痛み、熱感・性交痛

HIV/エイズ

  • 病原体:HIV(ヒト免疫不全ウイルス)
  • 感染経路:性行為(口、性器、性液、膣分泌物、肛門)、血液を介した感染、母子感染
  • 潜伏期間(感染してから症状が出るまで):何年にも及ぶことがあります。
  • 検査方法:採血検査
  • 治療方法:抗HIV薬(3〜4種類を組み合わせた多剤併用療法)
  • 初期症状:発熱、筋肉痛、関節痛、リンパ腺の腫れ

尖圭(せんけい)コンジローマ

  • 病原体:HPV(ヒトパピローマウイルス)
  • 感染経路:性行為(口、性器、性液、膣分泌物、肛門)、粘膜表面の傷から感染
  • 潜伏期間(感染してから症状が出るまで):約3週間〜8ヶ月程度(個人差あり)
  • 検査方法:医師の問診・視診・触診
  • 治療方法:外科的治療(切除・CO2レーザー・電気メスによる焼灼術)、軟膏塗布
  • 症状:陰部にカリフラワーのような突起 顆粒状、鳥のトサカが複数見られる
コンジローマ報告数

他にも様々な性感染症がありますが、あなたのお力になりますので遠慮なく一度相談だけでもいらしてください。いつでもお待ちしております。