尿路感染症だけじゃない!? 高齢者の包茎が健康に及ぼす影響とは?|さぎぬま泌尿器科・美容クリニック|川崎市宮前区の泌尿器科

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尿路感染症だけじゃない!? 高齢者の包茎が健康に及ぼす影響とは?

尿路感染症だけじゃない!? 高齢者の包茎が健康に及ぼす影響とは?|さぎぬま泌尿器科・美容クリニック|川崎市宮前区の泌尿器科

尿路感染症だけじゃない!? 高齢者の包茎が健康に及ぼす影響とは?

尿路感染症だけじゃない!? 高齢者の包茎が健康に及ぼす影響とは?

日本では、高齢者の健康に与える包茎の影響がしばしば見過ごされがちです。海外と比較して、日本の包茎手術への理解はまだ低く、その結果、多くの日本人男性がこの問題を持ったまま高齢になります。しかし、包茎が高齢者の健康に及ぼすリスクは無視できません。この深刻な問題に光を当てるために、さぎぬま泌尿器科・美容クリニックの野口尊弘院長に、包茎が高齢者に与える健康リスクと、治療・手術の重要性について詳しく話をお聞きました。

野口 尊弘(のぐち たかひろ)

監修医師:野口 尊弘

野口尊弘医師は、豊富な経歴と専門知識を持つ医学界の重鎮。帝京大学医学部を卒業し、その後、同大学院の医学研究科を修了。学問的な基盤を固めた後、帝京大学医学部附属病院で臨床助手として経験を積み、さらに順天堂大学静岡病院で助教授を務めるなど、そのキャリアは多岐にわたります。現在は、さぎぬま泌尿器科・美容クリニックの院長として、その豊かな経験と知識を生かしています。
野口医師は、医学博士の学位を持ち、日本泌尿器科学会から認定された泌尿器科専門医(JUA Board Certified Urologist)です。また、低侵襲治療の革新である手術支援ロボットの認定資格(da Vinci Certificate)を保持し、最先端の医療技術にも精通しています。彼の専門分野は、泌尿器科学だけに留まらず、日本抗加齢医学会、日本美容外科学会(JSAS)、日本美容外科医師会といった複数の学会にも所属し、抗加齢医学や美容外科学の分野においても活躍しています。その幅広い知識、経験、習熟した手技は、彼が提供する医療サービスの質をさらに高めています。

高齢者の包茎:敏感な問題の背後にある健康リスク

高齢者の包茎:敏感な問題の背後にある健康リスク

編.…編集部
院.…野口院長
近年、高齢者の包茎手術が増えてきているようですね。なぜ包茎が高齢者にとって重要な問題になるのでしょうか?何か高齢者特有の健康上のリスクがあるのでしょうか。
はい、その通りです。包茎は単に「恥ずかしいこと」を超えて、実際には健康面で無視できないリスクをもたらします。
では、実際に高齢者の包茎がもたらす健康リスクについて教えてください。
通常、包茎は単純な衛生問題と見なされがちですが、実際にはそれ以上のものです。例えば、皮膚感染症や尿路感染症のリスクが高まるのは周知の事実ですが、これに加えて、性的機能の低下や性感染症のリスク増加など、より深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。さらに社会的なスティグマや恥感が高齢者の自尊心に影響を与え、精神的なストレスや孤立を引き起こすことがあります。
先生から健康リスクについて3つのリスクが挙げられました。

  1. 皮膚感染症や尿路感染症のリスク
  2. 性的機能の低下や性感染症のリスク
  3. 社会的スティグマによる自尊心の低下と精神リスク

それでは一つひとつお尋ねします。

健康リスク①:皮膚感染症や尿路感染症のリスク

健康リスク①:皮膚感染症や尿路感染症のリスク

編.…編集部
院.…野口院長
初めに、包茎の高齢者が健康リスクとして抱える①「皮膚感染症や尿路感染症のリスク」についてお聞かせください。

包茎というのは、亀頭を覆っている包皮が完全にまたは部分的に引き下げることができない状態を指します。この状態は、特に高齢者において、清潔を保つのが難しくなることがあり、その結果、細菌の蓄積や感染のリスクが高まってしまうのです。

包茎が原因の皮膚感染症

包茎は細菌や真菌の成長に適した環境を提供する可能性があります。これは特に、糖尿病や免疫系の弱っている高齢者において顕著です。感染症は赤み、かゆみ、痛みを伴うことがあり、場合によっては悪化して皮膚の潰瘍や膿瘍を引き起こすこともあります。

包茎が原因の尿路感染症(UTI)

これは、包茎が尿道への細菌の侵入を容易にしてしまうことが指摘されています。高齢者では、尿路系の自然な防御機能が低下しているため、UTIが発生しやすくなります。UTIの症状には、排尿時の痛みや刺激感、頻尿、尿のにごりや悪臭、場合によっては発熱や腰痛が含まれます。

これらのリスクを軽減するためには、適切な衛生管理が重要です。高齢者やそのケアを担当する人々は、適切な洗浄技術と乾燥を保つことに注意する必要があります。また、包茎やその他の尿路系の問題に対しては、医療提供者に相談し、必要に応じた治療を受けることが重要です。

包茎の高齢者が引き起こしやすい感染症のリスクを軽減するためには、適切な衛生管理と必要に応じた医療の受け入れが重要だということですね。

健康リスク②:性的機能の低下や性感染症のリスク

健康リスク②:性的機能の低下や性感染症のリスク

編.…編集部
院.…野口院長
次に②「性的機能の低下や性感染症のリスク」についてお聞かせください。

包茎は高齢者の性的健康において複数の問題を引き起こす可能性があります。 一つ目に包茎は「性的機能」に影響を与える可能性があります。包茎の状態では、亀頭と包皮の間での摩擦が不十分になり、性的快感が減少することがあります。これは特に、性的活動が年齢と共に減少する高齢者にとって、さらなる障害となる可能性があります。

二つ目に包茎は「性感染症(STI : Sexually Transmitted Infections)」のリスクを高める要因となり得ます。包茎がある場合、①でもお伝えしましたが、包皮と亀頭の間に細菌やウイルスが蓄積しやすくなります。これは、性感染症のリスクを高める可能性があり、特に高齢者の場合はSTIの症状が若い世代に比べて明確でないことが多いため、感染に気づかないことがあります。結果、発見が遅ければ症状は悪化しますし、自分のみならずパートナーにも感染させてしまう可能性も高まります。

これらの点を考慮すると、高齢者の包茎は性的機能の低下やSTIのリスクに影響を与える要因となり得ると言えます。そのため、適切な医療の受け入れも必要な場面が出てくるでしょう。特に、STIのリスクを考慮した場合、定期的な健康診断やSTIのスクリーニングが推奨されます。

※スクリーニングとは、疾患の早期発見や予防を目的とした一連の検査や評価のことを指します。これにより、疾患の早期治療や予防措置が可能となります。

健康リスク③:社会的スティグマによる自尊心の低下と精神リスク

編.…編集部
院.…野口院長
それでは最後の③「社会的スティグマによる自尊心の低下と精神リスク」についてお聞かせください。まずは、社会的スティグマとはどういったものでしょうか?
社会的スティグマとは、特定の特徴、アイデンティティ、状態、または行動を持つ人々に対して、社会が否定的なラベルや偏見を抱くことを指します。
「差別や偏見」をイメージしてよろしいですか。
はい、差別や偏見も1つの側面として含まれます。具体的には社会的スティグマには以下の4つの側面があります。
側面 具体的な表現 影響
差別や偏見 公然とした差別行為、
微妙な扱いの違い
対象となる個人や
グループの機会や権利が制限される
ラベリングとステレオタイプ 否定的なステレオタイプや
ラベルの貼り付け
対象となる個人やグループが個々の特徴よりも、
ステレオタイプに基づいて判断される
社会的排除 社会からの排除や孤立、
特定の社会的機会からの締め出し
対象となる個人やグループが
社会的なサポートやリソースへのアクセスが制限される
内面化されたスティグマ 自己評価の低下、自己否定、
自分自身を非難する感情
対象となる個人の心理的健康や
幸福に悪影響を与える
これら社会的スティグマの4つの側面は、特に日本では古くからの文化的な特徴として「包茎」にも向けられる場合があるのです。包茎であることが理由で生じる社会的スティグマは、以下のようになります
1.差別や偏見

包茎であることに関して、他者からの無理解や偏見に基づく差別的な態度やコメントに直面することがあります。これは、冗談やからかい、あるいはより深刻な形での社会的排斥として現れることがあります。

2.ラベリングとステレオタイプ

包茎であることに関連して、特定の否定的なステレオタイプやラベルが適用されることがあります。例えば、「不潔」「未熟」などのラベルが貼られることで、個人の他の資質や特性が見落とされ、一面的な見方で判断されることがあります。

3.社会的排除

包茎であることが原因で、特定の社交的な環境や関係から遠ざけられる、または避けられることがあります。これは、親密な関係や性的な関係において特に顕著になることがあり、孤立感や社会的なつながりの欠如につながることがあります。

4.内面化されたスティグマ

包茎であることに関連する社会的なスティグマが内面化されると、個人は自己評価の低下や自己否定の感情を抱くことがあります。これにより、自尊心の喪失や自分自身に対する恥ずかしさや罪の意識を感じることがあります。よくあるのが、包茎を見られるのが嫌で「共同浴場に入りたくない」介護を受ける立場になっても「排泄介助や入浴介助を受けたくない」と、自ら他者を遠ざける思考になる傾向が表れるのがそれです。

野口院長、これらは確かに深刻ですね。社会的スティグマの影響を受けないためには、具体的にどのような行動が求められるのでしょうか?
「一人で悩む」状況から脱却することが大切です。包茎の問題については、専門医のアドバイスを受け、対話を開始することを強くお勧めします。今回お話しした①②③の点についても言えることですが、包茎は「隠す」のではなく、現代のカウンセリングや医療技術を活用して「解決する」時代になりました。この進歩は、若者だけでなく高齢者にも適用されるものです。
ありがとうございます、野口院長。包茎を「隠す」のではなく「解決する」という新しいアプローチは、確かに多くの人々にとって希望となるでしょう。この新しい視点は、最先端のカウンセリングや医療技術によって支えられているのですね。
このテーマに光を当てる機会を提供していただき、感謝します。この話題が包茎に悩む高齢者の方々に前向きな一歩を踏み出すきっかけとなることを願っています。

光が差し込む森林

最後に読者へメッセージをお願いします。

高齢者における包茎は、身体的および精神的な健康に影響を及ぼす可能性があります。この問題は、社会的偏見や差別、自尊心の喪失、社会的孤立など、多様な形で表れることがあります。しかし、このような問題を無視したり隠蔽したりすることは、決して適切な対応ではありません。逆に、包茎に起因する身体的、精神的なリスクを克服するには、適切な医療ケアが必要です。

特に重要なのは、医療ケアが包茎手術の専門知識と技術を有する医療従事者によって提供されることです。包茎手術は、身体的な健康はもちろんのこと、精神的な健康、自尊心、社会的なつながりを取り戻す上で、大きな役割を果たします。そのため、私たちは皆さんに、ご自身の身体と健康を大切にし、適切な医療ケアを受けることを強く勧めます。

さらに、包茎に関する社会的スティグマを理解し、それを克服するための対話を開始することが重要です。包茎に悩む他の人々との経験を共有し、相互支援により、社会的孤立感を減らすことも有効です。

こうした取り組みにより、高齢者の包茎がもたらす身体的、精神的リスクを減少させ、より健康的で充実した生活が送れるようになります。皆さんの身体と健康を大切にし、適切な医療ケアを受けることを心よりお勧めします。

編集部まとめ

編集部まとめ

包茎は高齢者の健康に多方面から影響を及ぼす可能性があります。具体的には、皮膚感染症や尿路感染症のリスクがあり、性的機能の低下や社会的スティグマによる精神的な負担も引き起こされることがあります。これらのリスクは、清潔保持の難しさ、糖尿病、免疫力の低下といった要因によってさらに高まります。
この問題に対する解決策としては、衛生管理の徹底と医療の受け入れが鍵となります。具体的には、高齢者でも安全に受けられる包茎手術、包茎に関する専門知識の習得、専門医との積極的な相談が推奨されます。
編集部としては、包茎が高齢者の健康に及ぼす影響に対し、もっと深い理解と認識が必要だと考えています。正しい知識と適切な治療へのアクセスは、高齢者の生活の質を向上させるために重要です。本記事が読者にとって、包茎に関する誤解を解消し、適切な治療への一歩となることを願っています。

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